利用者と事業者における話し合いのポイント 〜 一般の方向け

事業者と話し合いをするときは、制度等で分かりにくい内容もあるため、分からないことを理解できるまでしっかり確認することが大切です。

事業者から説明があった内容に納得がいかない場合には、何を根拠としているかを確認するのも一つの方法です。

利用者や家族等と事業者で話し合う場合に、どのようなことがポイントとなってくるか、苦情の内容ごとの例も掲載していますので参考にご覧ください。

話し合いの前に確認・整理をしておきましょう

  • 今回の問題が発生したきっかけ
    • 何がきっかけで事業者の対応に不満を感じましたか?
    • 不満を感じたきっかけが、サービスの内容なのか、職員の関わり方なのか、説明が不十分で事業者のサービス内容や対応の理由が分からないのか、暴言や暴力、所持品の破損、紛失等の被害なのか等、自分なりの原因を整理しておくと話し合いがしやすくなります。
  • 契約書や重要事項説明書
    • サービス利用契約上、事業者がすべきこと、できないことはどのように書かれていますか?
    • 記載されている内容が分かりにくい場合は事業者に確認してみましょう。
  • ケアプランや支援計画書等
    • 提供されるサービス内容等はどうなっていますか?
    • 自分で希望しているサービスの提供計画が無い場合は、プランの変更ができないか相談してみましょう。
    • 事業者では提供できないサービスもあります。不明な点は事業者に確認してみましょう。
  • 職員から受けた説明・対応、これまでに相談した内容・状況
    • 「いつ」「どのような」説明・対応を「誰から」受けましたか?
    • 「いつ」「どのような」相談を「誰に」して、「いつ」「どのような」回答を「誰から」うけましたか?
    • 分かる範囲で良いので、できるだけ具体的な内容を整理しておきましょう。
  • 事業者に改善して欲しいこと
    • ご自身が事業者に改めて欲しいことは何ですか?
    • 話し合いでは、ついつい色々と苦情、要望を言いたくなります。
    • 自分が何を改善して欲しいのか、自分の気持ちを整理しておくと話し合いがしやすくなります。

利用者等からの苦情の例


職員の対応・言動への不満

ホームヘルパーの言葉遣いや態度が気に食わない。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 には、サービス提供にあたっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行うと定められています。

ヘルパーの対応が、通常で言う丁寧という状態でなく、乱雑、乱暴というものであれば、改善を要望したり、場合によっては担当ヘルパーの交代を求めることができます。

どのような話し方をされるのか、どのような態度を取っているのか、具体的な対応内容を、苦情受付担当者に伝え、改善してもらえるよう相談してみてください。

「受け取り方の違い」「そういうつもりで言った訳ではない」等と言われ、話しがかみ合わない。

見解の相違とよく言われますが、職員の言動・対応で、ご自身が不快な思いをしたことは事実です。
苦情受付担当者等に、その職員が「どのように対応したのか、どのように言ったのか」をできるだけ正確に伝え、その対応や言動のどの部分をそのように感じ、受け止めて、不快な思いをしたのか伝えましょう。

見解の相違という場合には、職員がそのような言動、対応をするのに何らかの理由があるはずですので、その点の確認ができるだけでも、その後、不快な感じがしなくなることもあります。

そういった点も含めて、確認・相談をしてみると良いかもしれません。

その他のポイント

  • できるだけ苦情受付担当者や苦情解決責任者等も一緒に話しをする。
  • 事業者の方針で行われている介護方法、呼称等については、その方針にした理由を確認する。確認しても納得いかない場合は、方針変更や個別対応ができないか再度相談する。
  • 事前に施設見学等の機会があれば、その時にサービス提供の様子を確認しておくことも、後々のトラブル予防に効果的。

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説明が不十分

サービスに関しての説明が不十分で、内容が良く分からない。

福祉サービスの提供者は、サービス利用者が、適切かつ円滑に利用できるよう情報提供するよう努めなければならないとされています (社会福祉法第75条) (情報の提供)
第75条  社会福祉事業の経営者は、福祉サービス(社会福祉事業において提供されるものに限る。)を利用しようとする者が、適切かつ円滑にこれを利用することができるように、その経営する社会福祉事業に関し情報の提供を行うよう努めなければならない。

サービス内容が良く分からない場合や、説明されていないことがある場合などは、遠慮なく内容の確認をしたり、説明用の資料が無いか確認してください。

また、知的障がいをお持ちのご家族や認知症を患っているご家族等がサービスを利用していて、ご家族が何らかの不満を感じている場合は、利用者の症状に応じた理解しやすい説明や資料の提供を要望してみましょう。

よく分からないことや疑問に思う部分は、しっかりと確認することで、気持ちよくサービスを利用できるようになりますので、遠慮なく相談しましょう。

入居中の家族がケガをしていたが、ケガの原因の説明が無い。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 では、利用者がケガをした場合等事故発生時には家族への連絡が義務付けられていることがほとんどです。

ただ、本人の治療や救急対応を優先するなど状況によっては家族等への連絡が遅れている場合もあるかもしれません。多くの場合、運営基準の定めに基づいて事故の記録がされていますので、事故発生の状況や原因等について記録を基にした丁寧な説明を求めましょう。また運営基準に定めが無い場合でも、通常、何らかの記録等はされていると思われます。事業者に確認してみてください。

疑念をもったままサービスを利用すると、その後も些細なことが気にかかり、疑心暗鬼になってしまうこともありますので、気になる点は遠慮なく確認してください。

その他のポイント

  • 専門用語等で理解できない言葉がある場合は、遠慮なく質問する。
  • 分かりにくい制度・しくみについては、図や文章化したパンフレット等が無いか確認する。
  • 事故等について、明確な経過の説明がされない場合は、介護記録等の提示を求める。

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サービスに満足できない

約束の時間に作業所から送迎に来てもらえない。

サービスの利用開始前に作成した利用契約書等の内容を確認し、契約内容等と異なることが行われていた場合は、是正を求めることができます。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 には、概ね、利用者の希望に添って適切にサービスの提供を行うことや、介護の質の評価を行い、常にその改善を図るということが定められています。

もちろん制度上の制約や設備・体制等の問題もあり、全ての要望が受け入れられるわけではありませんが、不満や不便なことについては、遠慮せず相談し、事業者と利用者とが一緒にサービス改善できるような環境を作っていただきたいと思います。

食事が冷たく、温かいうちに食べたいとお願いしても改善してもらえない。

サービス提供は、利用者中心になければいけません (社会福祉法第78条) (福祉サービスの質の向上のための措置等)
第78条  社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 にも、食事に関して、栄養や利用者の心身の状況及び嗜好を考慮して提供するよう定められているものもあります。

施設等で大勢の方の食事を作る場合に時間がかかり、そのままのやり方では食事が冷めてしまうことはあるかもしれませんが、各施設等では様々な努力をしながら、できるだけ利用者においしく食べてもらえるよう工夫をしています。

サービス提供者が、その努力を怠り、事業者の運営上の都合で利用者の望まないサービスを提供し続けることは法の主旨からみても望ましいことではありません。

すぐに改善されない場合もあるかもしれませんが、その場合は、できない理由と今できること、利用者側で対応することで改善できることが無いか等を確認し、少しづつ改善されるよう相談してみましょう。また、場合によっては、苦情解決責任者等責任のある方に相談してみるのも良いかもしれません。

その他のポイント

  • 福祉サービスは、利用者を中心に提供されるべきものであるということを念頭に遠慮せずに相談する。
  • 現状、改善できないものも時間をかけて少しづつ改善できることもあるため、今、何ができるかなどを確認していくことも一つの方法。
  • 契約時の確認が不十分であると、後々、思っていたサービスと違うということにもなりかねないため、まずは契約時に気になる点をしっかり確認し、疑問を解消しておく。
  • 場合によっては、国などが定めるサービスの最低基準等( 施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 )を確認しておくと、事業者が本来すべきことが確認できるため、事業者の説明が正しいかの目安とすることもできる。
  • 利用者側で対応すること(※我慢することではなく、できることを協力すること)で、改善できる場合もあるので、事業者から協力の依頼があった場合は、十分に説明を聞き納得したうえで、できることを協力していくことも一つの方法。

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ケガや物の紛失の被害

家族が骨折し、入院することになったが、治療費を事業者が払わない。

サービス提供中に、事業者の責任による事故によって入院した場合は、事業者側で賠償する責任があります。

事業者は、概ね賠償保険に加入していますが、保険者は、事業者の責任が確認できないと、保険金の支払いをしませんので、事業者が、保険者にうまく説明ができず、事業者責任が認められないと保険金の支払いがされず、事業者側も家族等への説明が曖昧になってしまうことがあります。

事業者からはっきりした説明が無い時は、現状、どのような対応をし、今後に向けて何を検討をしているのか十分に確認しましょう。

また、状況によっては、労力はかかるものの、介護記録等の提示を求め、ケアプランは適切に組まれていたか、適切な介護が行われていたか、他の緊急用件の対応により予定通りの対応ができなかったようなことが無かったか等状況の説明を受け、事故の要因の整理等を事業者と一緒に行いながら責任の所在について協議する必要があるかもしれません。

運営適正化委員会では、責任の所在についての判断はできませんが、事故が起きた状況や説明におかしな点がないかの確認を一緒に行うことは可能です。状況の確認等について同席を希望する場合は遠慮なく相談ください。

自分が趣味で描いていた絵を、施設の行事で展示するため貸したが、数点紛失された。

本来、あるべきことではありませんが、時折、事業所の職員に預けた持ち物が返ってこないという相談があります。

まずは、関わった職員等全員に、何をいくつ預けたか確認し、貸したものの整理をしたうえで、その後の状況を確認してもらい、どうしても見つからない場合は、事業者に補償を要求することもできます。

ただし、たくさんの物を預けた場合に記録が無いと、ご自身の認識と事業者側の認識に差が出る場合もあります。

基本的にはあまり多くの物を貸したりすることは望ましくないのですが、施設の行事等ご自身でも協力したいと思う場合は、預り証を発行してもらうなど、何を、いつ、いくつ貸したのか、後々、確認できるようにしましょう。

どうしてもバタバタしていたり、時間が経過すると細かい部分が分からなくなることがあります。面倒と思わず最初に対応をお願いしてください。

また、金銭の貸し借りについては、どんなにお世話になっている職員であっても決してしないようにしましょう。しつこく頼まれるときは上司の方等に相談してください。

その他のポイント

  • 事故等の状況と今後の対応について十分に確認する。
  • 担当職員だけでなく、職員の上司、苦情受付担当者や苦情解決責任者も同席してもらい話しをする。
  • 言った言わないといった状況を避けるため、ケガの状況や何がいつ頃、無くなったか、破損したかを整理・記録し、また、事業者と協議した内容等も自分なりに記録しておく。
  • どうしても話しが折り合わない場合は、無料法律相談や警察等に相談することも検討する。

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虐待が疑われるとき

施設を利用している家族の体に薄い痣のようなものが複数あり、虐待を受けているように感じる。

明らかに虐待が行われている場合のみだけでなく、虐待が疑われる場合にも、発見者は、 虐待相談窓口(主に市町行政) 『関係資料・情報』のページへ移動 に通報する義務があります。責任を持って通報して下さい。

児童虐待防止法 第6条 (児童虐待に係る通告)
第6条  児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
  障害者虐待防止法 第16条 (障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報等)
第16条  障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
  高齢者虐待防止法 第21条 (養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報等)
第21条  養介護施設従事者等は、当該養介護施設従事者等がその業務に従事している養介護施設又は養介護事業(当該養介護施設の設置者若しくは当該養介護事業を行う者が設置する養介護施設又はこれらの者が行う養介護事業を含む。)において業務に従事する養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2  前項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
3  前二項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。

また、事業者と話す時には、苦情解決責任者等責任のある人を交えて話しをしましょう。

その他のポイント

  • 可能であれば、いつ頃、どのような虐待を受けたか、記録や写真で証拠を作る。
  • 虐待による死亡事故等大事故が起きる前には、暴言や金銭搾取等の虐待が起きていることもあるので、虐待の兆候を見つけた場合速やかに通報する。
  • 虐待と思われるようなケースを見過ごしてしまうと、大事故につながることもあり、事故にあった利用者はもちろん虐待のことを知っていた人も精神的に大きな負担を背負うことになるため、勇気を出して通報する。
  • 虐待か偶発的な行為か悩むような場合も、市町行政に通報し、第三者の目で確認をしてもらうことが重要。また、相談、通報することが抑止力になる場合も多い。
  • 通報する場合は、どのような行為がどのような状況で行われていたのか、1回だけの行為か、繰り返し行われている様子があるか等を分かる範囲で整理して連絡する。
  • 虐待通報窓口は、 コチラ 『関係資料・情報』のページへ移動 をご参照ください。
    どうしても市町行政に直接通報することがためらわれる場合は、本会にご相談ください。

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