利用者と事業者における話し合いのポイント 〜 事業者の方向け

利用者等からの苦情は、これまで事業者で気付かなかった問題点について認識することができ、サービスの改善に繋げていける良い機会と捉え、積極的に対応してください。

利用者や家族等話し合う場合に、どのようなことがポイントとなってくるか、例を掲載していますので参考にご覧ください。

利用者等からの苦情の例


職員の対応・言動への不満

ホームヘルパーの言葉遣いや態度が気に食わないという苦情。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 には、サービス提供にあたっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行うと定められています。

ヘルパーの対応が、通常で言う丁寧という状態でなく、乱雑、乱暴というものであれば、改善を要望されたり、場合によっては担当ヘルパーの交代を求められることがあります。

このような事態になった場合は、事業者としての責任や、事業所の質の問題を問われる事態にもなりかねません。

苦情を真摯に受け止め、迅速にヘルパーの対応を改善するための指導や研修会への参加等の対応を取りましょう。また、状況によっては担当ヘルパーの交代も検討しましょう。

利用者等から「言った意味と違う受け取り方」をされて苦情を言われ、事情を説明したが納得してもらえない。

よく見解の相違という説明で、事態を収めようとするケースの相談を受けます。しかし、職員の言動・対応で、利用者等が不快な思いをしたことは事実です。

職員が「どのように対応したのか、どのように言ったのか」をできるだけ正確に確認し、その対応や言動のどの部分で不快な思いをさせてしまったのか確認します。

また、職員がそのような言動、対応をしたことにも理由があるはずですので、何を伝えたかったのかと、その対応の何が問題で、どのような対応が望ましいか、今後のために確認・指導をしてください。

その他のポイント

  • 苦情受付担当者や苦情解決責任者等も同席し、利用者と職員の説明の差異について、なぜ認識の違いが起きているか確認し、職員へ必要な対応の改善を行うとともに、利用者にも改善状況等を丁寧に説明する。
  • 事業者の方針で行っている介護方法、呼称等については、その方針にした理由を丁寧に説明する。説明しても納得されない場合は、どの点に不満を覚えるのか確認し、何らかの対応ができないか再度検討する。
  • 職員のちょっとした対応・言動に対して苦情がある場合は、その前に細かな不満が積み重なっていることも多い。ちょっとしたことでも利用者に真摯に向き合い、他に不満に思っていることがないか併せて確認する。
  • 事前に施設見学等の機会があれば、その時にサービス提供の様子を十分確認してもらい、不明点や不安な点の質問を受けておくことも、後々のトラブル予防に効果的。

話し合いのポイントの先頭へ

説明が不十分

サービスに関しての説明が不十分で、内容が良く分からないという苦情。

福祉サービスの提供者は、サービス利用者が、適切かつ円滑に利用できるよう情報提供するよう努めなければならないとされています (社会福祉法第75条) (情報の提供)
第75条  社会福祉事業の経営者は、福祉サービス(社会福祉事業において提供されるものに限る。)を利用しようとする者が、適切かつ円滑にこれを利用することができるように、その経営する社会福祉事業に関し情報の提供を行うよう努めなければならない。

サービス内容が良く分からないと言われる場合や、説明を聞いていないと申し出がある場合などは、改めて内容の説明をしたり、必要に応じて資料等形の残るもので説明しましょう。

また、障がいをお持ちの利用者等からの説明が分かりにくいといった申し出の場合は、利用者の症状に応じて理解しやすい説明や資料を準備し説明するようにしましょう。

障害者差別解消法も施行され、可能な範囲での配慮(合理的配慮)も求められています。申し出をきっかけに、どのような説明の仕方が分かりやすいかを利用者にも確認しながら整理していきましょう。

入居中の家族がケガをしていたが、ケガの原因の説明が無いという苦情。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 では、利用者がケガをした場合等事故発生時には家族への連絡が義務付けられていることがほとんどです。

ただ、事故の起きた時間によっては、職員の勤務人数も少なくなることもあるため、ケガをした利用者への対応を優先せざるを得ないこともあります。

そのような時は、家族等への連絡が遅れる場合もあるかもしれませんが、連絡が可能になった時点で、できるだけ迅速に連絡することが求められます。

また、併せて、事故発生の状況や原因等について丁寧な説明が必要となりますので、後で確認したときにも状況が分かるように丁寧な記録を残し、それを基に利用者家族等に説明するようにしましょう。

その他のポイント

  • 専門用語は一般の人には理解しにくいことが多いためできるだけ分かりやすい言葉を使ったり、図や文章化したパンフレット等を使って説明するようにする。
  • 事故等で明確な経過の説明がされないと、利用者家族は不信感を募らせ、その後も安心してサービス利用を任せることができなくなるため、十分に注意する。
    また、保険の対応等で判断を迷うときも経過の説明を行うだけでも、一定の理解を得られることがあるため、できるだけ早い時期に経過や現状の対応、今後どのようなことが考えられるか等を丁寧に説明する。

話し合いのポイントの先頭へ

サービスに満足できない

約束の時間に送迎に来てもらえないという苦情。

サービスの利用開始前に作成した利用契約書等の内容を再度確認し、契約内容等と異なることを行っていないか確認しましょう。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 には、利用者の希望に添って適切にサービスの提供を行うことや、介護の質の評価を行い、常にその改善を図るということが定められています。

もちろん制度上の制約や設備・体制等の問題もあり、全ての要望をかなえられるわけではありませんが、利用者が不満を抱えたり不便と思っている点を改善することで、より良いサービスにつながるという視点を持ち、どのような対応であれば可能か、少しでも取り入れられる点はないか等検討しましょう。

また、どうしても利用者にあったサービスの提供が難しい場合は、そもそも事業所のサービスが利用者に適しているのか再確認し、利用者が福祉サービスを利用する目的と異なると思われる場合は、ケアマネジャーや障害者相談支援専門員等とも相談しプランの見直しや場合によっては別の事業所のサービス利用をすすめること等も調整しましょう。

食事が冷たく、温かいうちに食べたいとお願いしても改善してもらえないという苦情。

サービス提供は、利用者中心になければいけません (社会福祉法第78条) (福祉サービスの質の向上のための措置等)
第78条  社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

施設等の運営基準 『関係資料・情報』のページへ移動 にも、食事に関して、栄養や利用者の心身の状況及び嗜好を考慮して提供するよう定められているものもあります。

施設等で大勢の方の食事を作る場合に時間がかかり、そのままのやり方では食事が冷めてしまうことはあるかもしれませんが、例えば食事のグループを2つに分け、配膳時間を少しずらすことによって、できるだけ温かい食事を取ってもらうなど、事業者は様々な方法を検討し、できるだけ利用者においしく健康的な食事を提供する義務があります。

その義務を放棄し、事業者の運営上の都合で利用者の望まないサービスを提供し続けることは法の主旨からみても望ましいことではありません。

すぐに改善できない場合もあるでしょうが、その場合でも、今はできないこととできること、今後の改善に向けてどのような方法が考えられるかを整理し、少しづつでも改善できるよう努力する必要があります。利用者の苦情・相談からサービス内容を改善するという意識を忘れないようにしましょう。

その他のポイント

  • 福祉サービスは、利用者を中心に提供されるべきものであるということを念頭に、苦情を改善すべき点と捉え真摯に向き合う。
  • 現状、改善できないものも時間をかけて少しづつ改善できることもあるため、今、何ができるか、今後、どうしていくべきかなどを整理していく。
  • 設備や体制上、どうしても対応できないことはその旨を丁寧に説明するとともに、できることから改善したり、場合によっては利用者に協力をお願いすること(※我慢してもらったり、強制することではなく、できることを協力してもらうこと)で、改善できることもあるので事業者と利用者が一緒になって改善していく。
  • 契約時の説明が不十分であると、利用者の理解も不十分となり、後々、利用者から思っていたサービスと違うという苦情が出ることにもなりかねないため、契約時に丁寧に説明し、分かりにくい部分は図や写真の入ったパンフレット等を利用するなど、利用者の疑問をできるだけ解消できるよう努力する。

話し合いのポイントの先頭へ

ケガや物の紛失の被害

事業所の不十分な対応で家族が骨折し、入院することになったのに、なぜ治療費を払わないのかという苦情。

サービス提供中に、事業者の責任による事故によって入院した場合は、事業者側で賠償する責任があります。

事故を100%防ぐことはできませんので、万が一に備えて賠償保険等に加入しておくべきでしょう。また、保険者は、事業者の責任が確認できないと、保険金の支払いをしませんので、事故の状況を保険者にうまく説明ができないと、事業者責任が認められず保険金の支払いがされない恐れがあり、事業者としても家族等へ説明がしづらい状況なってしまうことがあります。

もし、事業者側の過失があると考えられる中で、保険金の支払いが認められない場合は、利用者や家族に、現状、どのような対応をし、今後に向けて何を検討をしているのか丁寧に説明しましょう。

利用者や家族は曖昧な説明を受けると不信感を募らせることになりかねません。利用者等を中心に考え、誠意をもって対応するようにしましょう。

なお、時折、過剰な要求を受ける事があります。そのような場合は、事業者としてできることを明確にし、厳正な対応をすることも必要です。場合によっては弁護士等に相談することも検討しましょう。

利用者が趣味で描いていた絵を、施設の行事で展示するため借りたが、数点紛失してしまい苦情の申し入れがあった場合。

本来、あるべきことではありませんが、時折、事業所の職員に預けた持ち物が返ってこないという相談があります。

そのような場合は、しっかりと探すことが基本です。関わった職員等全員に、何をいくつ預かったか確認し、借りたものを整理をしたうえで状況の確認行いましょう。どうしても見つからない場合は、利用者に補償する必要が出てきます。

たくさんの物を預かった場合に記録が無いと、利用者の認識と事業者の認識に差が出る場合もあります。

基本的にはあまり多くの物を借りることは望ましくないですが、施設の行事等で利用者の参加も促したい場合には、預り証を発行するなど、何を、いつ、いくつ借りたのか、後々、確認できるようにしましょう。

大きな行事の時は、どうしてもバタバタしがちです。時間が経過すると細かい部分が分からなくなることがありますので、できる限り形に残せるようにしておきましょう。

その他のポイント

  • 事故等の状況はキチンと記録し、今後の対応と併せて利用者や家族等に丁寧に説明する。
  • 担当職員だけでなく、職員の上司、苦情受付担当者や苦情解決責任者も同席し、状況を整理しながら相談を受ける。
  • 言った言わないといった状況を避けるため、ケガの状況や何がいつ頃無くなったか、破損したか、利用者に説明した内容や、依頼された事項等を適切に記録しておく。

話し合いのポイントの先頭へ

虐待が疑われるとき

施設を利用している家族の体に薄い痣のようなものが複数あるが、職員から虐待を受けているのではないかとの申し入れ。

明らかに虐待が行われている場合のみだけでなく、虐待が疑われる場合にも、発見者は、 虐待相談窓口(主に市町行政) 『関係資料・情報』のページへ移動 に通報する義務があります。

児童虐待防止法 第6条 (児童虐待に係る通告)
第6条  児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
  障害者虐待防止法 第16条 (障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報等)
第16条  障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
  高齢者虐待防止法 第21条 (養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報等)
第21条  養介護施設従事者等は、当該養介護施設従事者等がその業務に従事している養介護施設又は養介護事業(当該養介護施設の設置者若しくは当該養介護事業を行う者が設置する養介護施設又はこれらの者が行う養介護事業を含む。)において業務に従事する養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2  前項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
3  前二項に定める場合のほか、養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。

事業者あてに通報があった場合も、責任をもって状況確認や行政への通報等対応してください。

万が一、虐待が確認された場合は、施設・事業所全体での状況を確認するともに、利用者等へ責任のある説明・対応を行いましょう。

逆に偶発的な事故によるケガを虐待と誤解された場合は、介護記録や事故当時の写真等記録を元にご家族等に丁寧に説明しましょう。

その他のポイント

  • 虐待と思われる通報があった場合、迅速に状況確認を行うなどの対応をするとともに、市町行政へ通報を行う義務がある。
    (明確な証拠が確認されなくても、疑わしい状況が確認された場合、通報する義務があります)
  • 虐待を行っていると通報を受けた職員が虐待を行っているか偶発的な行為だったのかはっきりしない場合も、市町行政へ通報し、第三者の目線で確認・判断してもらうことが重要。
  • 施設の中で完結させていると、虐待としての対応ではなく、「対応方法が不適切だったので今後注意しよう」といった注意喚起で終わり、実際には虐待が継続してしまうこともある。
  • 虐待による死亡事故等大事故が起きる前には、暴言や金銭搾取等の虐待が起きていることもあるため、虐待と思われるようなケースを安易に見逃さないようにする。
    まずは初期の段階でキチンと対応することが重要。
  • 通報を受けた後は、どのような行為がどのような状況で行われていたのか、1回だけの行為か、繰り返し行われている様子があるか等を十分に確認し、偶発的な行為であったとしても問題のある行為である場合は早期に対策を立てるとともに、必要に応じて利用者等に説明を行う。
  • 日頃から「ヒヤリハット事例報告」「虐待防止チェックリスト」等を活用し、虐待を未然に防げるよう事業所の環境を改善していく。
    参考資料は コチラ 『関係資料・情報』のページへ移動

話し合いのポイントの先頭へ

お問い合わせ先

長崎県運営適正化委員会 事務局

〒 852-8555 長崎県長崎市茂里町3-24 県総合福祉センター2F 長崎県総合福祉センター案内図 長崎県総合福祉センター案内図を開く

TEL:095-842-6410 / FAX:095-842-6740

Mail:tekisei@nagasaki-pref-shakyo.jp

受付時間:9時~12時、 13時~17時(土・日・祝日を除く)